それは、世界を侵す恋。
松本蜜柑です。
まだ咎狗小説もCool-Bも届かないので、今日も『沙耶の唄』の話です。
今回はネタバレ感想ですので、未プレイの方はご注意ください。
事故の後遺症で五感が変化し、すべての普通の人間がおぞましい肉塊に見え、普通の日常の風景がジューシーなモツ風味ワールドとなった、主人公郁紀。そんな生理的嫌悪に満ち満ちた世界で唯一、美しく清浄な少女、沙耶。
あー感覚が反転してんだなー、というのはプレイヤーにはすぐにわかることなので、さだめし沙耶の真実の姿というのは、そっちこそがアレでナニなゲテゲテでげろげろの…というのも、すぐわかることであります。
そして、郁紀自身も、そんなことはたぶんわりとすぐに気づいてます。ハッキリ明文化してそれを考えるのは、沙耶にもとの感覚に戻りたいかと聞かれたときですが、それ以前にもううすうす郁紀は気づいています。理性も判断力も失っていないので。
でも、それでも郁紀は沙耶を愛する。愛することを選択する。
そこが萌えるー!
もとの感覚を取り戻せば、こんなおぞましいモツワールドから抜けだせるその代わりに、沙耶を失うことになります。姿なんてどうでも、愛があれば大丈夫!……という理論が超無力であることは、この感覚になってからすべての優しい友人たちに心許せなくなったことで、すでに経験済みなわけですから。
だから郁紀はあえてもとに戻らない。沙耶を愛しつづけるために。
も、萌えるー!
いやいやいや、真実から目をそらして、ふたりだけのぬるま湯の楽園に閉じこもろうとする、そーゆークソ美しい愛の物語、なんてものは、じつは私はあまり好きではないです。
そんなの気持ち悪いじゃないか。そんなん人として間違っとるやないか。そんなんしないと維持できない愛なら、やめちゃえばー? …と、思うのです。
でもこの『沙耶の唄』に限っては、それは超アリなのですよ。
だってこれはもー最初からそーゆー気持ち悪い愛なのだし、そうしないと維持できない愛だし、間違ってるし、ってそんなことわかっててそれを選んでいるのだから、むしろあっぱれと言えましょう。
この世界にたったふたりきり、孤独な男と、孤独な少女。それは男が狂っていなければ生まれなかった恋。
だから男は狂い続けるのです。少女を愛するために。
ももも萌えるー!(もういい)
まあ、もとに戻りたいとうっかり答えてしまったルートもあるんですが、そちらもせつなくていいです。
もとに戻った郁紀の前から沙耶は消え、もう一度だけふたたび会ったときには、扉をはさんでお互い顔を合わせないのですよ。沙耶は郁紀に真実の姿を見られたくない。郁紀もあえて沙耶を見ない。すぐそこにいるのに、携帯に文字を入力して話をするふたりがせつないです。
この狂った恋の結末の、トゥルーエンドはやはり終末エンドだと思うんですが、あれは本当に美しかったなー。絵的にもここぞとばかりに幻想的でした。普通人ビジョンで見たらきっとどえらいゲテゲテな場面なんでしょうが。
今日の一枚はラフですが沙耶と郁紀。昨日の沙耶よりか細く描こうとがんばってみました。
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