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2016年11月13日 (日)

この世界の片隅に 感想ネタバレ

初日に海老名で「この世界の片隅に」を観てきました。

一言で言えば素晴らしい映画でした。

この話は、戦争、広島、原爆などが作中出てきますが、戦争ものではありませんし、反戦を訴えてるわけでもありません。

これから書き散らす駄文は、有用なレビューではありませんし、隅から隅までネタバレする所存なので、まだ映画観てない方は絶対に見ないようお願いします。

責任はとりません。

以下おりたたみー。

こうの史代さんの原作は、かなりあちこちにギミックを仕掛けてあったり、突飛な演出を繰り広げて、初見は狐につままれるような気分になるのですが(読み返すと理解できる)映画では、そのへんをかなり地均しして、入り込みやすいようにしてありました。

ツイッターにもちょっと書きましたが、この話は「女たちが自分の居場所を見つける話」です。

浦野すずさん(18)は広島で、妹や祖母とのんびりと海苔を漉く仕事などして暮らしていましたが、そこへ突然の縁談。

ぶつちゃけこの縁談は、足を悪くした姑の代わりに家事をやってくれる人員を求めてのことで、実際作中でも舅さんが姑さんに「嫁も来たしあとは安気に寝とれやのう」と言ってます。
ここ映画ではさらに「家事は任せて」とちょっぴり露骨な台詞が付け加えられてます。

小さい頃に一度会ったきりの「いい人か悪い人もかもわからない」相手と、自己紹介みたいなノリで初夜を迎え、その日のうちに嫁としてフル稼働。

ダンナの周作さんはいい人だし、こうの史代ワールドではかなりいい男の部類。姑さんも舅さんもいい人で日々はほのぼのと描写される。

で、そのほのぼのに包んで、けっこうきついエピソードを盛り込んでくる…。
始終コミカルに描写してたけど、すずさんにハゲができる(円形脱毛症)エピソードは、すずさんの心が多大なストレスを抱えてることをもろに表してるし、その原因は戦争などではなく、嫁としての生活です。

ストレスの原因の大半は、周作さんの義姉の径子さん。最初はしょっちゅう里帰りしてたぐらいだったのが途中から出戻ってきます。
このへんのやりとりも一見コミカルに描かれてるものの、径子さんの娘さんの晴美ちゃん(5)にも折り合いが悪いのを見抜かれたりしています。

しかし周作さんとは、ゆっくりと想いを育んでいき、結婚してるのにまだ恋愛初期のような初々しさでこのへんメチャクチャ甘酸っぱい…!

とはいえ、すずさんの居場所はまだない。

映画はちょっとしか触れてませんでしたが、すずさんになかなか子供ができないこと、そして遊女の白木リンさんが過去に周作さんのなじみであったこと……から、自分が代用品ではないかのかという思いに捉われたりする。

こう書くとなんかギスギスしてるっぽいですが、すずさんの目を通した世界は、すずさんの性格のようにちょっとぼんやりしてて柔らかい。

ところで、このお話を「淡々とした日常が戦争によって壊されていく」と評してるのを見たりしましたが、すずさんにとっては呉での暮らしのほうが非日常だったと思う。
むしろすずさんは、戦争がこの非日常を壊してくれることを心の奥底で願っていたと思う。

それが露になるのが、晴美ちゃんといるときに時限爆弾に巻き込まれて、晴海ちゃんと右手を失くしてしまってから。
「あの時わたしの居場所はどこだったろう。
そうだ反対側の塀
いくらか板が抜けとったはず
爆風に乗ってあそこに飛び込めば
あの向こうあの向こうこそ
わたしの居場所だったんだろうか」

このモノローグが本当に泣けた…。

そして、家を壊されて佇む女の人の背中を思い出し
「あの人
家を壊されてどうしんさったじゃろ
この都市を出て行けたじゃろうか
家を壊してもらえて堂々と出て行けたじゃろうか」
と考える。

すずさんはそんな自分を「歪んでる」と思うけど、これは明らかにすずさんの奥底の本音だと思う。

義姉の娘を死なせ、右手を失い(家事ができない)心の行き場を失ったすずさんは広島に帰ることを決める。それに対して周作さんは
ずっとここは知らん男のよその家のまんまか」と言う。

あっ…周作さん、わかってたんじゃん…!すずさんの所在なさを…。
ところで映画のこのシーンは大変に萌えた…。初々しいばかりだった二人に情念のようなものが芽生えててグッときた…。あと声がつくとやっぱりいいですね…。

で、そんなすずさんに居場所を作ったのが、奇しくもすずさんに一番ストレスを与えてた径子さんだった…。
径子さんも出戻りで居場所のない女性だけれど、ダンナと死に別れても、娘を亡くしても、息子と離れ離れになっても「自分で選んだ人生だから不幸せではない」と言う。
そしてすずさんの「言いなりに嫁にもらわれて働かされる」辛さを理解してくれた。

ああー…!この時代でも、いやいつの時代だって、自分で選べない生き方ってやっぱり辛いんだな…!周作さんのことは好きでもそれとこれとは違うんだ…。

そして「すずさんがイヤんならない限りすすさんの居場所はここじゃ」と言ってくれる…。
とうとうふたりの間に芽生える友情のようなもの…。あえて淡々としてるところがまたいい…。

戦争は終わり、新しい世界が始まる。居場所を見つけたすずさんの心は清しく、失くした右手が描く心の絵はどこまでも美しい。

そして、母親と死に別れ浮浪児をになった、居場所のない少女に手を差し伸べて物語は終わる。
ENDロールの「その後の図」は、アニメのオリジナルで(原作ではあとがきのところにチラッと出てくるけど)心底、優しみが染み渡る…。周作さん、髪伸ばしたんだね…。

この世界の片隅にみんなの幸せが息づいていきますように…。
そう心から願える物語でした。

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コメント

やっぱり面白そうですね。最近は大作アニメ映画が多いけど、埋もれないでほしい。

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